親子二世帯のための週末住宅である。敷地は火山が長い年月をかけて浸食された地形の中の、雛壇状の別荘造成地の一角である。間知石擁壁によって造成された土木的地形の上に、不自然なコントラストで小さな住宅が並んでいる。一見歪なこの状況を独自の建築の形式に変換できないかと考えた。土木スケールと建築スケールの間を調停する、擁壁に擬態させたRC造の斜めの構造体(以降 ” 擁壁 “)を背骨として建築を構成する。この ” 擁壁 ” を コアとして、機能に合わせて変形させる。さらに施主である音楽家のスタジオとして、響きを担保する気積を与え、擁壁の断面形状がL字にクランクしたような形態が生まれた。そこにかつての地形をトレースするような、木架構の屋根を” 擁壁 ” に腰掛けるように設置することで、土木的地形に寄り添うような住空間とした。些細な敷地の問題点に着目し、住人の特性を掛け合わせることで、その状況下でしか成立し得ない建築の形を目指した。
用途 専用住宅
意匠設計 齋藤 弦/Strings Architecture + 酒井 禅道
構造設計 平木 裕文/株式会社 周設計
施工 瀬戸建設株式会社
造園設計 橋内庭園設計
造園施工 Landscape 生ル森
建築面積 89.64 m²
延床面積 120.73 m²
撮影 西川公朗写真事務所(図面・ダイアグラム以降 齋藤 弦)
所在地 神奈川県湯河原町